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健康経営向上コラム

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何から取り組めばいい?
顕彰制度からみる健康経営のトレンドとはじめの3STEP!

ますます注目が高まる健康経営ですが、「何から取り組めばいいかわからない」という声も聞かれます。そこで今回は2022年度の健康経営銘柄企業の傾向を分析して見えた健康経営のトレンドと経済産業省の狙いを踏まえ、これから健康経営に取り組む企業がまずすべきことについて具体的な手順を解説します。

01-顕彰制度からみる健康経営のトレンド

2022年(本年)度の顕彰制度で変更点は、①情報開示の促進、②業務パフォーマンスの評価・分析、③スコープの拡大についての3点となりました。そして本年度の認定では、健康経営銘柄では50社が選定され、過去最高となりました。(参考: 経済産業省、「健康経営銘柄2022」に50社を選定しました!)2022年のキャッチコピーは、「健康こそ、会社の、社会の原動力だ。」です。健康経営の定義である「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する」より、従業員と企業、さらに社会にまで相乗効果を与えるという意図に原点回帰したと考えられます。この文言は、健康経営銘柄で選定された50社のポスターからも確認できます。(参考:経済産業省、健康経営銘柄2022ポスター

健康経営銘柄企業のうち19社が初認定で、例年より多い入れ替えとなっています(マルハニチロ株式会社、高砂熱学工業株式会社、株式会社ゴールドウイン、協和キリン株式会社、出光興産株式会社、日本特殊陶業株式会社、古河機械金属株式会社、株式会社SUMCO、アネスト岩田株式会社、日本電気株式会社、セイコーエプソン株式会社、株式会社アドバンテスト、豊田合成株式会社、ヤマハ株式会社、北海道電力株式会社、東海旅客鉄道株式会社、株式会社DTS、株式会社愛知銀行、株式会社アドバンテッジリスクマネジメント)。また、制度開始から8年連続で選定されているのは、花王株式会社、SCSK株式会社、株式会社大和証券グループ本社の3社です。真のトップランナー企業といえるでしょう。

大規模法人部門の健康経営銘柄の傾向を見ると、キーワードは、「体重や肥満者の削減&ウォーキングなどの運動習慣」、「残業削減やワークライフバランス」、「産業医など保健スタッフの活用」が多く見受けられます。(参考:健康経営銘柄2022 選定企業紹介レポート)また少数ではあるものの、コミュニケーションの促進や健康(ヘルス)リテラシー、組織の活性化なども特筆すべき取り組みとして出てきています。これらの経営面での効果も、一定の評価を得ているようです。

02-取り組みの3STEP

さてここでは顕彰制度を含めた健康経営の取り組みの3 ステップ(前編) を紹介します。

(筆者作成)

顕彰制度への応募は、健康経営度調査票に回答することになるので、STEP1に該当します。また、取り組みにあたり制度や人等の準備が必要となりますので、コストと捉えられます。その後、2019年に公表された健康経営管理会計ガイドラインを活用し、戦略マップや投資リターンを推計します。これによって、健康経営が投資になります。最後にSTEP3として、健康経営を経営戦略として昇華していきます。

具体的には、STEP1として、毎年夏に開示される健康経営度調査を見るとよいでしょう。調査票には、多くの項目(2022年度版で71)があり、また関係する部署の多さに驚かれる事だと思います。さらに各設問項目には「●●データを取得していますか?」等の質問もあり、取り組めていないことも多々実感するはずです。健康経営には多くの効果がありますので、出来る限り早く、初期の準備はコストに該当することになりますが、少しずつでも制度の整備に取り組んでいくのがよいでしょう。

次に、STEP2として、経済産業省が2020年に開示した「健康投資管理会計ガイドライン」をご覧いただき、健康投資とリターンについて推計してみましょう。また戦略マップを描くことにより自社の取り組みが、従業員レベルなのか、または組織制度レベルなのか、それとも会社の目標とする経営理念等に該当するのか、そしてそれらはどのようにつながっている、または関係しているのかを考えることができます。ポイントは、多少強引になったとしても、まずは推計してみることをおすすめします。これによって、多くの効果を得ていることが金額で見える化され、経営陣含め担当者も実感できるはずだからです。

STEP3として、経営資源を活用し、また健康経営の対象を自社の従業員のみにするのではなく、従業員の家族、関係会社、地域、社会へと拡大していくことが考えられます。健康経営は、持続可能な開発目標であるSDGsの「3.すべての人に健康と福祉を」と「8.働きがいも経済成長も」にも該当します。また、ESG投資のSocial(社会)にも該当し、投資先に選ばれる環境になっています。さらに健康経営は、早ければ2024年にISO(国際標準)化が予定されています。まずは取り組みを始め、取り組んでいる企業はさらに進化させ、このムーブメントに乗っていくことが肝要です。

03-取り組む対象と座組&クロスファクションチーム

健康経営の取り組みは、主な対象が従業員のため企業内に留まる印象があります。しかし前回の図1:「健康経営・健康投資」とは(引用:経済産業省、健康経営の推進について、2021年10月、P.19)で紹介されていた通り、健康経営は、企業への効果のみではなく、社会への効果も期待されているのです。具体的には「国民のQOL(生活の質)の向上」、「ヘルスケア産業の創出」、「あるべき国民医療費の実現」が掲げられています。

では、このように期待されている中で、企業は健康経営にどのように取り組めばよいかと考えると、下記が対象と具体的な介入手法になります。

図1健康経営の対象者(社) (筆者作成)

上段3段が企業内における社内に該当します。下段に、従業員等の家族が該当し、最下段には株主や地域が対象となります。また介入手法には、家族には組合報や社内報、最近では自社の健康増進施策や健康経営についての取組みをまとめた「健康白書」を作って家族等に配布している企業も増え、家族の健康支援も積極的に行っています。従業員にとって、家族が不健康で治療等していれば当然不安で仕事も手につかないことも想定されるでしょう。元気に生き生きと働いてもらうためにも、家族も巻き込んで取り組むことは、従業員のメンタル対策にもつながることでしょう。

次に、株主や地域にも健康経営の取り組みは影響を与えます。企業の株式を保有している出資者である株主は、企業の経営に対して株主総会等を通し、意見を述べることができる立場にあります。企業業績が傾いたり、経営戦略が正しくなかったり判断すれば、取締役の選任に反対する等で否定することができます。しかし前回の表1:健康経営顕彰制度の選定・認定企業数(参考:健康経営銘柄、健康経営優良法人認定制度、経済産業省ウェブサイトより筆者作成)の通り、上場企業における健康経営に取り組む企業数は増え続けています。つまり、株主に否定されることなく、認められている戦略になりつつあると、私は密かに喜んでいます。

では地域にはどのような影響を与えるかと考えると、健康経営で従業員のヘルスリテラシーの向上がはかられ、定年退職等後に地域の国民健康保険等に入っても、従業員時代の経験から毎年健康診断も受けるし、地域主催の健康増進施策にも積極的に参加する住民となることでしょう。また健康経営の施策で、通勤時にウォーキングや自転車を推奨した場合、自動車通勤や電車通勤が減り、排出ガスの削減が期待できます。さらに、健康経営の成果を自社内にとどめるだけではなく、地域に還元する動きもでてきました。これらは、地域に対してCSR(企業の社会的責任)活動として受け入れらます。そしてCSR活動は、地域から評判とリクルート効果を得てきました。

いかがでしたか?健康経営といっても様々な方法があり、またその対象も影響も広がっていることが感じて頂けたことかと思います。次回は、・・・。お楽しみに!

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。